2023 年 7 月 21 日

アジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向 2023 年 4 月~6 月

求職者は“働き方”を重視、企業の“採用力”が問われる

Asia 9 Countries, White collar recruitment market report, 2023 April to June

世界 12 ヵ国で人材紹介事業を展開する株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント(代表取締役会長兼社長:田崎ひろみ 以下、JAC)は、JAC グループ各社の拠点を展開しているアジア各国での、2023 年 4 月~6 月のホワイトカラー人材紹介の市場動向をまとめました。

【ジェイ エイ シー リクルートメント アジア各社の求人数増減一覧】

※日本企業の海外事業関連求人

注)アジア各社の求人数については、アジア各社が意図的に講じた戦略(高額帯年収の求人やスペシャリスト層求人に特化する など)により、増減する場合もあります。
 そのため、アジア各社の求人数の増減は、各社の業績を直接反映するものではありません。

全体総括:JAC Recruitment 海外進出支援室 室長 チーフアナリスト 佐原 賢治

各分野への影響範囲の広い自動車関連業界が半導体不足による生産調整から脱しつつあるなか、域内の景気は回復局面にありますが輸出の減少や企業物価の高止まりなどもあり、景気の見通しについては慎重姿勢の企業も少なくありません。人材採用市場は、求人件数こそ伸びてはいるものの高い要件を満たす人材に絞った採用が行なわれており、各社の”採用力”が問われています。
一方、求職者側では報酬水準相場を冷静に見ながら、決して焦ることなく納得のいく条件で転職したいと望む意向や、報酬や仕事内容だけでなくリモートワークなどの”働き方”についても重視する姿勢が顕著です。自社の提示する条件等が相場や標準と比べて競争力があるか、折に触れて点検を行なうことが重要です。また、求める人材がデジタルなど先端分野の人材である場合には、異業種や周辺他国の給与相場についても意識しておくことが必要です。

<各国ヘッドライン>

シンガポール:景気減退がみられる中、国外からの日本人求職者が増加
マレーシア:   経済成長の不透明さから人材獲得の競争力が問われる
 タイ:           連立新政権樹立に注目集まる。採用はスキル・待遇面マッチに課題
インドネシア:自動車業界の復調をうけ関連企業の業績が回復
 ベトナム:     経済成長率は鈍化も内需主導での成長トレンドを堅持
 香港:           緩やかな景気回復の中、人材流動は活発化
 韓国:           半導体市況は低迷するが、非製造業は景況感が緩やかに改善
 インド:        売り手市場により企業の採用活動が長期化
 日本:           国内景気は持ち直しも海外経済に減速懸念あり

※国名をクリックすると国別レポートへジャンプできます。

シンガポール:景気減退がみられる中、国外からの日本人求職者が増加

求人数前年同期比:99%
求人数前期比(過去 3 年):

<国内情勢>

4 月~6 月も引き続き経済指標は低下傾向で、景気の減退がみられました。シンガポール経済開発庁(EDB)発表の 5 月の製造業生産高指数は同年同月比 10.8%減少。電気・電子、半導体などの製造業を中心に下落の幅が大きく、3か月連続の落ち込みとなっています。それに伴い、5 月の消費者物価指数は前年同月比で5.1%に減速し、前月を 0.6 ポイント下回る結果となりました。また、日本円に対するシンガポールドルが過去最高値の 1 ドル=107 円をつけ、その後も高止まりで推移しています。

<企業の採用動向>

1 月~3 月に引き続き企業からの求人数は伸びており、新型コロナウイルスの影響による様々な海外渡航の制限が無くなったことから、特に日系企業の新規進出や M&A における人材採用などのご相談が相次ぎました。4 月には、シンガポール国内で活躍する高度人材を海外から誘致する Compass 制度について、審査の追加情報がありました。また、就労ビザ申請のためのオンライン申請サイト(My MOM Portal)もリニューアルされ、企業からは Compass 制度に関する人事戦略のご相談も増えました。審査基準への対策として、シンガポール人の採用を強化しようとする傾向も見られます。

<求職者の動向>

日本人求職者の登録は引き続き増加しており、特にシンガポール国外からの登録者が増え、国内登録者の 2 倍となりました。新型コロナウイルスの流行が収束傾向で海外渡航の心理的ハードルが下がった事もあり、実際に渡航して転職活動を行う人も増えています。シンガポール人も積極的な転職活動ではないものの、自身の市場価値を確かめる目的で登録する人も見受けられるようになりました。
求職者が企業を選ぶ際のポイントとして、在宅勤務と出社勤務の組み合わせである「ハイブリッドワーク」の導入が重要視されるようになっており、勤務形態に関する質問が増えています。

JAC Recruitment Singapore Managing Director Fahad Farook

JAC Recruitment シンガポール法人 社長
ファハド・ファルック

■JAC Recruitment シンガポール 概要
https://www.jacgroup.com/ja/jac-locations/jac-singapore
■JAC Recruitment シンガポール 転職サイト
https://www.jac-recruitment.sg/ja

マレーシア:経済成長の不透明さから人材獲得の競争力が問われる

求人数前年同期比:82%
求人数前期比(過去 3 年):

<国内情勢>

2023 年後半に経済成長が減速すると予想されている。世界経済の減速による輸出の低迷、外需の悪化やコスト上昇による内需の鈍化、さらにリンギッド安の進行がその要因と考えられます。一方で、政府の金融対策でインフレ圧力が抑えられるという良いニュースもある。エコノミストは、マレーシア全体の今年の経済成長率は 4.5%程度になると予測しています。

<企業の採用動向>

マレーシアの失業率は 2023 年 5 月に 3.5%まで低下し、2020 年 2 月以来の低水準となりました。失業者数は前年比で 9.6%減少し、雇用者数は 2.5%増加。これらの数値は労働市場の前向きな傾向を示しており、経済が雇用機会を創出できることを示唆しています。製造業活動が 10 ヶ月連続で減少するなど、課題も残っていますが、特定の分野では成長の機会が残されており、将来への希望をもたらしています。

<求職者の動向>

不透明な経済情勢を受け、下半期はキャリアアップのために積極的に転職先を探す求職者もいれば、むしろ慎重になって転職をためらうといった様々なアプローチを求職者が取ると予想され、採用市場の競争は激しくなると考えられます。今年の傾向として、求職者は転職時に最大 30%の大幅な給与アップを期待しているため、給与アップの提示が 20%までに留まる企業は、優秀な候補者を見つけるのに苦労するかもしれません。採用予算が限られている雇用主は、この厳しい雇用市場で競争力を維持するために、福利厚生の充実やその他の待遇面を積極的に考えなければならないでしょう。

JAC Recruitment Malaysia Managing Director Nic Taylor

JAC Recruitment マレーシア法人 社長
ニック・テイラー


■JAC Recruitment マレーシア 概要
https://www.jacgroup.com/ja/jac-locations/jac-malaysia
■JAC Recruitment マレーシア 転職サイト
https://www.jac-recruitment.my/ja

タイ:連立新政権樹立に注目集まる。採用はスキル・待遇面マッチに課題

求人数前年同期比:138%
求人数前期比(過去 3 年):

<国内情勢>

タイでは 5 月 14 日に下院総選挙が行われ、野党が議席を大きく伸ばしました。野党 8 党による連立政権樹立の覚書が締結され、新政権の掲げる政策が今後経済に与える影響にも注目が集まっています。タイの 4 月~6 月の実質 GDP 成長率は、ASEAN 主要 6 カ国で唯一前期成長率を上回りました。個人消費と観光業に牽引された結果と見られています。
5 月の自動車・二輪車の生産台数も前年同月比をそれぞれ 16.5%、1.7%上回っています。

<企業の採用動向>

4 月はタイの旧正月連休(ソンクラン)、5 月には日本の大型連休があることから、例年この時期の採用の動きは鈍化します。ただ人材の現地化の動きは継続しており、GM や MD レベルのハイクラス求人のご相談が引き続きある状況です。
マネージャー以下の求人については、増員よりも欠員補充理由が多く、新型コロナウイルスの収束に伴い経済活動が再開したことで、人材の流動化が起きたことによるためと思われます。
日本人採用に関しては、業界問わず、経験者や高い語学スキル等を求める求人が増えています。そのため候補者はいるものの求めるスキルに合わず、採用活動が長期化するケースが増えています。これは急募採用より、優秀な候補者がいれば採用するという方針の企業が多いことを示しています。

<求職者の動向>

例年、1 月~3 月に比べ、4 月~6 月は求職者の登録が増加します。日本での新年度がスタートし、大型連休を過ごして以降、転職に関心を持つ求職者が増えるという季節要因といえます。今年も日本在住の求職者からの問い合わせが多くありましたが、現職同等以上の給与額や、駐在員待遇での転職を希望する方も多く、情報収集目的のご登録が多かった印象です。
タイに限らずですが、優秀な人材確保のためには待遇面の充実化が避けられません。企業側の待遇アップの動きが、今後の求職者の転職意欲にも影響を与えるといえます。

JAC Recruitment Thailand Managing Director Gavin Henshaw

JAC Recruitment タイ法人 社長
ガヴィン・ヘンショー


■JAC Recruitment タイ 概要
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■JAC Recruitment タイ 転職サイト
https://www.jac-recruitment.co.th/ja

インドネシア:自動車業界の復調をうけ関連企業の業績が回復

求人数前年同期比:100%
求人数前期比(過去 3 年):

<国内情勢>

インドネシアの大型連休(レバラン休暇)後、新車販売台数が回復し、年間販売台数 100 万台を超えるペースとなりました。これに伴い日系自動車メーカーをはじめ、主要取引先であるティア 1 企業を中心に自動車関連企業の業績も回復しています。EV マーケットでは韓国・中国企業に遅れを取っている日系大手メーカーではありますが、現在こぞって中価格帯の国内生産のハイブリッド車をローンチし、消費者への訴求を行っています。
5 月にインドネシアが議長国を務めた ASEAN 首脳会議での合意を受け、今後より一層脱炭素への動きが加速していきます。

<企業の採用動向>

新型コロナウイルスの収束に伴い、製造業界ではエンジニア、生産管理、品質管理を中心に駐在員の交代が進んでいます。多くの企業で世代交代のタイミングとなり、30 代、40 代を想定した求人となっています。日本本社からの交代要員不足を背景に、これまで以上に現地採用への切り替えを検討する企業が増加しています。非製造業では営業やバックオフィスの求人が多く、同様に 30 代、40 代を想定した求人が中心となっています。製造業、非製造業で共通する求人としては IT ポジションとなり、特にエンジニアの求人数が多く、採用が難しいポジションとなっています。

<求職者の動向>

新型コロナウイルスの収束に伴い、引き続き海外での転職を希望される日本在住求職者が増加しています。年代としては 20 代、30 代が中心となっていますが、過去にインドネシア駐在歴のある 60 代の求職者も活発に活動しています。
他の ASEAN 諸国に比べ比較的就労ビザの取得要件が容易なインドネシアは、多くの 20 代、30 代の求職者の方にご登録いただいております。日常会話レベルでご応募いただける求人も多く、初めての海外転職先にインドネシアを選ぶ方も増えています。

JAC Recruitment Indonesia Associate Director Toma Yamashita

JAC Recruitment インドネシア法人 アソシエイトダイレクター
山下 冬馬


■JAC Recruitment インドネシア 概要
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■JAC Recruitment インドネシア 転職サイト
https://www.jac-recruitment.co.id/ja

ベトナム:経済成長率は鈍化も内需主導での成長トレンドを堅持

求人数前年同期比:91%
求人数前期比(過去 3 年):

<国内情勢>

統計総局(GSO)の発表によると、2023 年 1 月~6 月期に全国で新規設立された企業は前年同期比 0.5%減の7 万 5874 社となり、アフターコロナで急回復傾向がみられた状態から落ち着きつつある様子がうかがえます。2023 年 6 月の全国消費者物価指数(CPI)は前月比+0.27%上昇、前年同月比では+2.0%上昇で、要因は食品価格と電気料金の引き上げ。
GDP については 4 月~6 月の成長率は前年同期比+4.14%と減速。輸出産業がリセッションの様相を呈するのに対して、内需刺激策や観光促進活動によりサービス業が引っ張っている状況となっています。

<企業の採用動向>

4 月~6 月は例年、求人需要が高いシーズンではありますが、今年は足元の景況感により各企業における採用活動に濃淡がみられます。世界的インフレに伴う買い控えや半導体不足による生産停滞の影響を受けている製造業では、増員募集は減少し、欠員補充を目的とした採用が中心となっています。一方、好調を維持しているサービス業では採用活動が活発化しており、IT 業界ではコストファーストを意識した採用から、能力のある人材を適切な待遇で採用する企業が増加傾向にあります。
今年に入ってから、外国人に対する労働許可証の発行難易度が増していますが、その許認可に関する理由とは別に、現地化へ舵をきり、日本人駐在員を減らして日本人・ベトナム人の現地雇用人材を増やしている企業が増えている傾向もみられます。

<求職者の動向>

新しい機会を求めて転職活動をしている求職者は、継続してマーケットに出てきている状況。給料を第一優先として転職活動を行う求職者だけではなく、やりがいやキャリアアップ、福利厚生の充実などを目指した求職者も増えてきており、求職者デマンドの多様化が見受けられます。
日本からベトナムへの海外転職希望者数は横ばい傾向。中長期的な実現に向けて情報収集を行っているフェーズの方も多く見られます。労働許可証発行の厳格化が、ベトナムでの転職希望者における転職活動の抑制要因となっており、早期の緩和が強く望まれます。

JAC Recruitment Vietnam Managing Director Kengo Atsumi

JAC Recruitment ベトナム法人 社長
渥美 賢吾


■JAC Recruitment ベトナム 概要
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香港(中国香港特別行政区):緩やかな景気回復の中、人材流動は活発化

求人数前年同期比:77%
求人数前期比(過去 3 年):


<国内情勢>

4 月~6 月の実質 GDP は、インバウンド観光と内需の力強い回復に牽引され、前年同期比 2.7%増となり、4四半期連続のマイナス成長に終止符を打ちました。2023 年後半に入り、香港の緩やかな回復の勢いはインバウンド観光と内需に牽引され続けると考えられます。しかし、逼迫した金融情勢と低調な輸出は未だ回復途中にあります。これらの状況を考慮し、香港の 2023 年の実質 GDP 成長率予想は 3.5%~5.5%に維持されると見込まれています。

<企業の採用動向>

日本人の採用については、1 月~3 月と比較して中途採用のポジション数が減少し、新卒者数が増加しており、募集ポジションの大半はリプレイスメントや急募の案件です。特に業界では、飲食、ゲーム、保険で積極的な採用が行われ、職種では人事、総務、秘書、経理、営業サポートなどの採用が増加傾向にある。
日系企業のデジタル・技術系ポジションでは、採用が減速する傾向にあり、ほとんどの場合、IT 部門の新規人員はなく、代替要員のみの募集となっています。 また、多くの大手ハイテク系企業が、特にインターネット、e コマース、ブロックチェーン分野で、4 月~6 月にレイオフを行い、該当者は、香港に仕事の機会を求めています。しかし、特定の分野で現地の技術人材が不足しているとしても、企業は香港永住権や広東語のスキルを持たない候補者の雇用をまだためらっている状況です。
一方、小売・消費者市場では、特に e コマース、IT、ESG、小売の最前線での営業職の求人が増加しています。そして特筆すべきはこれらのポジションの大半が新規採用ではなく、代替要員として募集されることです。その結果、適切な候補者の需要は高く、複数のオファーを同時に受け取る可能性もあり、競争の優位性が浮き彫りになっています。

<求職者の動向>

インフレに伴い、求職者はそれなりの給与アップを期待しているが、企業がそれに見合うだけの給与を提示することは難しく、専門性の高いスキルを持った人材はより良い機会、環境、報酬を求め、香港から移住していると見られています。
一方で香港では現在も移民の波が続いており、香港の人材スキームを通じて優秀な人材が流入しています。デジタル技術の専門家に対する需要は依然として高く、多くの求職者は給与の高さよりも雇用の安定を優先しています。
市場の回復が続く中より多くの候補者が市場に参入し、積極的に新しいポジションを求め、さまざまなキャリアの選択肢を模索しており、空席のあるポジションをめぐる競争がさらに激化することが予想されます。

JAC Recruitment Hong Kong Managing Director Jannet Cheung

JAC Recruitment 香港法人 社長
ジャネット・チョン


■JAC Recruitment 香港 概要
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韓国:半導体市況は低迷するが、非製造業は景況感が緩やかに改善

求人数前年同期比:79%
求人数前期比(過去 3 年):

<国内情勢>

2023 年 6 月上旬に OECD が発表した経済見通しによると、今年の経済成長率を 0.1 ポイント下方修正した1.5%となりました。韓国の全体景況感は、製造業では半導体市況の悪化や輸出低迷、また高金利による投資減退が影響し、改善されていない状況ですが、非製造業では民間消費が緩やかに回復しているため、少しずつ改善されています。サービス業の雇用回復が進んでいることもあり、5 月失業率は 2.5%で、過去最低水準となりました。

<企業の採用動向>

4 月~6 月の企業求人状況は対前期比で 26%減、対前年四半期で 20%減となりました。背景には韓国経済に多大な影響を与えるサムスン電子の第 1 四半期業績が 95%減益となり、半導体の減産方針を発表した影響もある程度有るように感じます。
また、引き続き欠員補充による採用募集があります。特に若手社員の離職が増えつつあり、国内営業職を中心に若手社員の募集が目立っています。
コロナウイルス感染拡大以前と比較すると、在宅勤務が可能な案件や顧客との会食が少ない案件が増加しています。一方で管理職や中堅社員以上の募集は直近で減少傾向にあるように感じます。

<求職者の動向>

転職マーケットには徐々に求職者が戻ってきています。一見、企業にとって採用の選択肢が増えるように見えるため、採用予定企業にとっては歓迎しがちですが、一方で現職中の勤務者が転職を視野に入れ始めたと考えれば、穏やかな部分ばかりでないかもしれません。弊社で転職理由をお伺いすると、「給与を上げたい」が上位回答の常連でありますが、さらに事情を丁寧に伺うと、「上司との人間関係」と挙げる方も少なくなく、本音の退職理由の一つのようです。これからは、全体的な離職率を下げる管理職の力が今まで以上に重要である時代に突入しているようです。

JAC Recruitment Korea Managing Director Yuichiro Tsuchiyama

JAC Recruitment 韓国法人 社長
土山 雄一郎


■JAC Recruitment 韓国 概要
https://www.jacgroup.com/ja/jac-locations/jac-korea
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インド:売り手市場により企業の採用活動が長期化

求人数前年同期比:180%
求人数前期比(過去 3 年):

<国内情勢>

国連による最新の推計によるとインドは 2023 年にも総人口が中国を超え、世界 1 位になるとみられています。若い年齢の人口が多いこともあり、今後も高成長への期待が高く、消費市場としても、生産拠点としても非常に潜在力があります。経済成長率も 6%近くで推移しており、特に個人消費は底堅く、緩やかに右肩上がりで推移しています。また、経済を反映する乗用車の販売数についても 2023 年 4 月には、33 万台と、7 ヵ月ぶりに 30 万台を超え、緩やかではありますが今後の経済の成長も期待が持てる状況です。

<企業の採用動向>

乗用車の販売数が底堅く伸びていることもあり、特に自動車関連の企業の採用活動は非常に活発化しています。特に新たな拠点設立など今後の事業拡大を目的とした採用が増加傾向にあります。一方でインド人の採用動向については、企業の採用活動が活発化することで候補者への転職の機会も増加するため、退職による補填的採用活動も増加傾向にあります。また、日本人の採用動向については、日系企業への営業拡大を目的とした採用活動が多く見られ、インド国内で競合する企業から更なる売り上げのシェアを拡大しようと積極的に日本人を採用する企業の動きが多くみられました。
ただ、優秀な人材には多くの企業からの積極的なアプローチがあり、オファーを提示しても他社からのオファーを承諾してしまうなどして採用活動が長期化する傾向にあります。

<求職者の動向>

日本人の動向については海外就業を希望する候補者が増加傾向にありますが、インドだけに絞って就職活動を行う候補者はまだまだ少ない状況です。他国の就業も視野に入れながら、積極的に求人に応募しています。他国も含め比較的多くの求人があることから、複数の企業の選考を同時に受け、年収などの条件面も考慮し、最善の選択をしようと考える候補者が増加傾向にあります。
インド人の動向については4月以降に多くの企業が実施する評価のタイミングにあわせて、多くのインド人が年収アップを目的として積極的に転職活動が行われました。通年の昇給(10%程度)に加え、転職をする際に20%から30%程度の昇給を希望することが一般的なマーケット相場となっており、採用する際には現年収から約30%近く昇給した年収のオファーを提示することが求められるなど、採用コストや人件費に対して柔軟な対応が求められます。

JAC Recruitment India Managing Director Kazuo Komaki

JAC Recruitment インド法人 社長
小牧 一雄


■JAC Recruitment インド 概要
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■JAC Recruitment インド 転職サイト
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日本:国内景気は持ち直しも海外経済に減速懸念あり


求人数前年同期比:134%
求人数前期比(過去 3 年):

<国内情勢>

国内景気はインバウンド旅行客の回復や賃金上昇に伴って持ち直しが感じられますが、海外経済はインフレや欧米で行なわれている利上げの影響、また中国の景気後退などによって減速の懸念が拡がっています。一方、半導体供給に回復の兆しが見られ、自動車生産の増加が予測されること、また再び加速した円安が輸出企業の収益を大幅に押し上げていること、またデジタル化・脱炭素化など中長期的な課題から、企業の設備投資は決して落ち込んでいません。
しかしながら、ロシア・ウクライナ情勢や台湾有事の懸念といった地政学的リスク、利上げの長期化による需要の減退といった点には注意が必要です。

<企業の採用動向>

2023 年 5 月の有効求人倍率(パート除く)は 1.31 倍。前月(4 月)と同水準で、前年の 5 月を 0.06 ポイント上回りました。前年同時期と比べ、業績回復に伴い求人が増加したのに対し、賃上げや夏期ボーナスへの期待感から転職希望者が減少していることが原因であると考えられます。
一方、当社に寄せられた新規求人申込数(日系海外事業要員募集)は、前年同期比 134%と大幅に増加しています。特に大手・準大手企業を中心に、DX や CASE(次世代自動車)、再生可能エネルギーといった成長分野への投資に伴う R&D(研究開発)系人材の需要は更に高まり、各社の獲得競争は一層し烈になっています。
国際間連携が進む成長分野では、海外パートナーとの連携を行うことができる人材のニーズが増えています。
一方、職種別では、グローバルでの人的資本管理や組織のグローバル化を目的とするグローバル人事の募集や、海外拠点のガバナンス強化を目的とする ERP(統合業務システム)導入など、IT システムの開発、導入、保守経験者の募集など、バックオフィスの求人の増加も顕著に感じられます。

<求職者の動向>

4 月~6 月の新規求職者(海外勤務経験を有する登録者)数は、前期比 100%と横ばいも前年同期比では111%と大幅に増えました。コロナ禍によって常態化した在宅勤務など、新たな働き方を求める動きに加え、SDGs やパーパス経営など社会課題解決への貢献意欲や、人的資本経営への積極性など、各社の開示情報の充実が人々の転職に対する潜在的な関心を高めているほか、企業の海外投資を報じるニュースが増加していることも一因であると考えられます。
一方、企業の選考のハードルは高止まりしており、選考通過率(合格率)は、やや低下しています。その分、優秀な人材に対してオファーが集中しているということでもあり、人材獲得競争は一層し烈です。先端分野や海外ビジネスなどの知見・経験を有する人材を募集する場合には、より競合を意識した給与条件の設定や、働き方の柔軟性や組織の多様性といった職場の魅力の訴求を丁寧に行なう必要があります。

JAC Recruitment Global Recruitment Support Chief Analyst Kenji Sahara

JAC Recruitment 海外進出支援室 室長 チーフアナリスト
佐原 賢治


■JAC Recruitment 概要
https://www.jacgroup.com/ja/jac-locations/jac-japan
■JAC Recruitment 転職サイト
https://corp.jac-recruitment.jp/

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