2023年10月17日

アジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向 2023年7月~9月

人材市場も中国経済や各国の内需が影響

アジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向2023年7月から9月 | JAC Group

世界11ヵ国で人材紹介関連事業を展開するJACグループは、拠点を展開しているアジア各国での、2023年7月~9月のホワイトカラー人材紹介の市場動向をまとめました。

【ジェイ エイ シー リクルートメント アジア各社の求人数増減一覧】

 前期(4~6月)比前年同期比
シンガポール95%60%
マレーシア111%69%
タイ97%94%
インドネシア64%103%
ベトナム105%114%
韓国169%161%
インド101%164%
日本(※)88%106%

※日本企業の海外事業関連求人
注)アジア各社の求人数については、アジア各社が意図的に講じた戦略(高額帯年収の求人やスペシャリスト層求人に特化するなど)により、増減する場合もあります。そのため、アジア各社の求人数の増減は、各社の業績を直接反映するものではありません。

 

全体総括
不動産バブル崩壊や米国による半導体輸出規制などに対する懸念から、近年中国との経済的結びつきを強めているASEANなどアジア諸国における景況感に陰りが見えています。しかしサプライチェーンリスクの回避を目的とする中国からの生産移管が進むベトナムや、日米両国が積極的な投資姿勢を明らかにしているインドでは企業の人材投資意欲も旺盛です。また2010年代前半の進出ラッシュから約10年を迎えるタイやインドネシアでは経営現地化を目的とする幹部候補人材の募集が増えていることなど、各国の人材市場の状況はまだら模様です。

<各国ヘッドライン> *国名をクリックすると該当国の詳細レポートへジャンプできます。
シンガポール:世界的な景気減速の影響が続くマーケット
 マレーシア:失業率改善の予測も経済状況の不透明さが続く
    タイ:ついにタイ新首相が決定。タイの就労ビザ・許可書の取りやすさに注目集まる
インドネシア:二輪、四輪関連会社の上半期の好調を受けサプライヤー企業も増収
  ベトナム:経済成長率は鈍化も労働許可証の取得要件緩和など明るいニュースも
    韓国:2023年下半期、2024年の経済成長予想は好調を予想。失業率も改善
   インド:経済成長を見込み採用活動が活発化
    日本:足元の景況感は改善続くも海外経済に減速懸念あり 

シンガポール:世界的な景気減速の影響が続くマーケット

求人数前年同期比:60%
求人数前期比(過去3年):

2020年2021年2022年2023年

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

106%131%100%112%90%151%96%156%68%157%59%95%

 

<国内情勢>

7月~9月のシンガポールは建国記念日や大統領選挙など、さまざまなイベントが目白押しでした。建国記念日に際して実施された首相演説であるナショナルデーラリーでは、今後の住宅対策や、「Young Seniors」と呼ばれる50代と60代前半の方々に向けた老後支援、高齢者支援について触れられました。また、近年の政治家や公務員に関する不祥事に対する政治システムについては、シンガポールがクリーンであることを強調しました。6年に1回行われる大統領選挙では、ターマン・シャンムガラトナム前上級相兼経済政策調整相が有効票の70%以上を獲得し、就任が決まりました。
シンガポール貿易産業省(MTI)は、2023年通年のGDP成長率見通しを、従来の0.5~2.5%から0.5~1.5%に引き下げることを発表しました。電子機器業界を中心に製造業が急激に悪化しており、これがシンガポールの成長率を圧迫している要因とされています。

<企業の採用動向>

日系企業は引き続き採用を続けていますが、人件費や経営コストの上昇から、採用が難しい状況にある企業も多いのが現実です。また、9月からは新たなEP取得基準であるCOMPASSが導入され、これまでの申請者個人の給与や学歴だけでなく、企業の在籍スタッフの多国籍化やローカル人材比率など、企業側の審査も行われることになりました。
バックオフィス系や営業系のポジションでは依頼が多いですが、求人数は減少傾向にあります。MNC企業でも、世界的な景気減速や米中貿易摩擦、中国国内市場の減速がシンガポール経済に影響を及ぼしており、市場での新規雇用創出は停滞しています。技術産業も引き続き保守的な傾向があります。全体として、10月以降も非常に低調であり、2024年年明けからの回復が期待されています。

<求職者の動向>

日本人求職者については、4~6月に比べ、7~9月は微減しているものの大きな変化はありませんでした。在シンガポールの日本語話者を対象としたセミナーを開催したことから、すでにシンガポールで働いている方やシンガポール永住権保持者の方の新規登録・再登録も増えました。転職後の希望として、在宅勤務をはじめとするフレキシブルな働き方を希望する求職者が多く、その点が応募承諾の際に重要なポイントとなるケースも増えています。また、永住権保持者は多くの企業からニーズが高く、転職活動開始から内定までの期間が非常に短いため、企業側は早めの決定を求められることが一般的になっています。

JAC Recruitment Singapore社長ファハド・ファルック

JAC Recruitment Singapore 社長 
ファハド・ファルック

■JAC Recruitment シンガポール 概要
https://www.jacgroup.com/ja/jac-locations/jac-singapore

■JAC Recruitment シンガポール 転職サイト
https://www.jac-recruitment.sg/ja

 

 

マレーシア:失業率改善の予測も経済状況の不透明さが続く

求人数前年同期比:69%
求人数前期比(過去3年):

2020年2021年2022年2023年

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

88%150%116%95%104%105%105%131%61%132%78%111%

 

<国内情勢>

世界銀行は、外需の大幅な減速と世界経済の成長鈍化を理由に、マレーシアの2023年のGDP成長率予測を4.3%から3.9%に引き下げました。内需が引き続きマレーシア経済の底堅さを支えることが期待される一方、輸出への依存度が高いマレーシアは影響を受けており、今年第1~2四半期の輸出は3.3%減少しました。
半導体製造業は特に大きな打撃を受けており、大幅な人員削減と雇用機会の減少につながっています。

<企業の採用動向>

マレーシア工業開発銀行(MIDF)の調査によると、マレーシアの雇用市場は、以前は成長パターンを示していたが、現在は様々な地域的・世界的要因による不確実性に直面しています。同調査によると、マレーシアの平均失業率は2023年には3.5%からさらに低下し、その後2024年には3.3%というパンデミック以前の水準に戻ると予想されています。これは主に外国人労働者の減少によるもので、これにより雇用全体が強化され、失業率が低下すると期待されています。しかし、2024年の見通しについては様々な分野で慎重な姿勢が見られます。このような状況下にもかかわらず特定の業界では引き続き求人があるため、これらの職種に対する競争は激化しています。

<求職者の動向>

不透明な経済情勢により、キャリアアップのために積極的に転職先を探したり、慎重になって転職をためらったりと、候補者はこれから様々なアプローチをとることになると思われます。

JAC Recruitment Malaysia社長ニック・テイラー

 JAC Recruitment Malaysia 社長
ニック・テイラー

■JAC Recruitment マレーシア 概要
https://www.jacgroup.com/ja/jac-locations/jac-malaysia

■JAC Recruitment マレーシア 転職サイト
https://www.jac-recruitment.my/ja

 

 

タイ:ついにタイ新首相が決定。タイの就労ビザ・許可書の取りやすさに注目集まる

求人数前年同期比:94%
求人数前期比(過去3年):

2020年2021年2022年2023年

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

81%143%90%93%90%154%80%143%57%205%82%97%

 

<国内情勢>

5月の下院総選挙で第1党の前進党は結果的に政権獲得が出来ず、3か月の首相空白期間の後、第2党が擁立したセター氏が首相に就任しました。デジタルウォレットの配布を通じ、消費の拡大と、雇用機会の創出などを施政方針に挙げており、他にも観光客のビザ免除等を打ち出して、さらなる観光収入を生み出す方針を示しています。
なお、タイ中央銀行(BOT)の7月経済金融報告によると、タイ経済は回復を維持しているものの、輸出は低調との発表をしています。

<企業の採用動向>

8月はお盆による休みの影響で、日系企業では特に採用スピードが低下します。今年も8月中旬前後で選考が一時ストップするなどの影響がありました。
求人傾向ですが、日本人採用の求人数は前期に比べて微増したものの、欠員補充理由が多く、経済の停滞による影響かビジネス拡大のための増員募集は少ないです。駐在員から現地採用への置き換えのニーズはあり、初めて現地採用を検討する企業からご相談をいただくケースは増えています。

<求職者の動向>

前期比とほぼ変わらない水準で、今期もご転職希望者の方の新規登録がありました。特に海外での就労機会を求めて、タイ国外から転職相談に来る方の割合が増えています。
タイのメリットは就労ビザと労働許可証の取りやすさにあり、他国でのビザ要件の厳格化から、就労の叶わなかった候補者がタイでの転職を目指して来るケースも増えています。日本での現職同等または駐在員待遇での転職希望者も一定数いるため、優秀な候補者の獲得のために待遇改善をどれだけ図れるかが引き続き採用のポイントとなると言えます。

JAC Recruitment Thai社長ガヴィン・ヘンショー

JAC Recruitment タイ法人 社長
ガヴィン・ヘンショー

■JAC Recruitment タイ 概要
https://www.jacgroup.com/ja/jac-locations/jac-thailand

■JAC Recruitment タイ 転職サイト
https://www.jac-recruitment.co.th/ja

 

 

インドネシア:二輪、四輪関連会社の上半期の好調を受けサプライヤー企業も増収

求人数前年同期比:103%
求人数前期比(過去3年):

2020年2021年2022年2023年

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

72%186%97%83%107%138%101%61%129%85%148%64%

<国内情勢>

インドネシア証券取引所に上場している自動車、自動車部品メーカー15社の2023年上半期の決算が発表されました。特に二輪市場に関しては2022年同時期と比較し、販売台数が4割以上増加。これに伴い15社中9社が増収、11社が増益または黒字化となりました。インドネシア最大手のアストラグループと合弁を組んでいるトヨタ、ダイハツ、いすゞの新車販売台数は2022年同時期と比較し7.4%増、ホンダ(二輪)は56%増となりました。

<企業の採用動向>

二輪、四輪市場の好調を受け、自動車部品メーカーでの求人が増加しています。日系の自動車部品メーカーの多くは当地で10年以上の操業歴があるため、20~40代を積極的に採用し、若返りを図っている企業が多いように感じます。また、コロナ渦で日本へ帰国した駐在員の後任を日本本社から派遣できない後任者不足の企業が増えている事から、現地採用を選択肢に含めて検討する企業が増加しています。職種としては、最も多いのが営業・購買です。エンジニア・社内ITに関しては、求職者の数が少ない事と20~40代の求職者が少ない事から多くの企業が採用に苦戦しています。

<求職者の動向>

求職者の数として最も多い年齢層は男女とも50~60代、次いで20代の若手の求職者が多いです。
職種としては50~60代ではエンジニア・工場管理が多く、20代の候補者は英語能力や留学経験を生かし海外での転職に挑戦したいという方が多数です。
また、2022年10~12月からの動向として世帯主30~40代の求職者が徐々に増えています。海外での転職理由が子供をインターナショナルスクールに通わせたいという理由で、仕事内容や待遇とは別に生活環境や学費を含めて検討する傾向があります。

JAC Recruitment Indones アソシエイトディレクター 山下冬馬

JAC Recruitment インドネシア法人 アソシエイトダイレクター
山下 冬馬

■JAC Recruitment インドネシア 概要
https://www.jacgroup.com/ja/jac-locations/jac-indonesia

■JAC Recruitment インドネシア 転職サイト
https://www.jac-recruitment.co.id/ja

 

 

ベトナム:経済成長率は鈍化も労働許可証の取得要件緩和など明るいニュースも

求人数前年同期比:114%
求人数前期比(過去3年):

2020年2021年2022年2023年

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

116%88%180%76%60%248%111%84%67%137%119%105%

 

<国内情勢>

ベトナム統計総局(GSO)の発表によると、2023年7~9月期のGDP成長率(推定)は前年同期比+5.33%となり、前年同期よりも減速。2011~2023年の7~9月期の比較でもコロナ禍の2020年、2021年を除いたすべての年を下回る結果となり、底堅い成長はしているものの、苦戦している様子が見受けられます。
そのような景況観の中でもサービス業は+6.32%となり、経済成長を牽引しています。主に外国人観光客の増加や国内旅行の活発化が要因と考えられます。

<企業の採用動向>

足元の景況観により各企業における採用活動に引き続き濃淡がみられます。特に銀行を中心とした金融業界やIT業界は例年に比べても採用活動への影響が見受けられます。そのような状況のため、増員募集は全体的に少なく、欠員補充が多い状況です。しかし、新規設立企業は昨年比でも増加傾向にあり、設立に伴う採用ニーズが増えている印象です。
例年、年末にかけ採用ニーズはダウントレンドに移行するタイミングとなるため、今年も例年に漏れず採用活動は落ち着いてくる予想となります。一方、今年に入り難易度を増していた労働許可証取得プロセスが9月に入り緩和されたので、日本人を含む外国人雇用の検討を進める企業は今後増えてくることが予想されます。

<求職者の動向>

今後については、求人数同様、来年の旧正月に向けて緩やかにアクティブな人材が減少していくと予測しています。日本からベトナムへの海外転職希望者数については、依然としてやや低調。年齢層別でみると、シニア層の海外転職希望は変わらず強く、実際に本気で活動している方も多い印象です。一方のジュニア・ミドルクラスにおいては、足元の日本の経済状況などから海外就業を希望する潜在層は増えていますが、実際の転職活動にまで踏み込めている方はまだ限定的といえます。
しかし、労働許可証の取得要件が緩和されたことにより、日本人を含めベトナムへの転職希望者の転職活動の抑制要因がなくなったので、求職者にとっては追い風が吹き始めている状況です。

JAC Recruitment Vietnam Regional Director トゥ・ハー・グエン

JAC Recruitment ベトナム法人 Regional Director
トゥ・ハー・グエン

■JAC Recruitment ベトナム 概要
https://www.jacgroup.com/ja/jac-locations/jac-vietnam

■JAC Recruitment ベトナム 転職サイト
https://www.jac-recruitment.vn/ja

 

 

韓国:2023年下半期、2024年の経済成長予想は好調を予想。失業率も改善

求人数前年同期比:161%
求人数前期比(過去3年):

2020年2021年2022年2023年

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

98%102%167%88%117%90%96%84%125%104%73%169%

 

<国内情勢>

2023年7月、韓国政府は通年の実質GDP成長率を1.4%とし、当初予想の1.6%を下方修正しましたが、下半期は半導体を中心に輸出が徐々に改善するだろうという前向きな見通しをしています。そして2024年の実質GDP成長率を2.4%と見通しを立てており、経済の改善を予想しています。韓国経済に大きな影響を及ぼす主要企業も来年度に向けた新規事業・新戦略の発表がされました。半導体事業を牽引しているサムスン電子では2025年に2ナノ工程での量産を発表。SKハイニックスでは世界最高仕様のメモリー半導体HBM3Eの開発に成功し、2024年上半期より量産が開始されます。

<企業の採用動向>

7~9月の企業求人状況は新規事業の立ち上げ、欠員補充が落ち着き、新たなポジションの採用を開始する企業が目立っていたと感じます。ポジションとしては特に営業職で、韓国での市場開拓の営業人員のご依頼が多い状況です。
日系企業は日本本社との連携の為、依然としてどのポジションであっても日本語を求める依頼が多く、求職者の母数も限られてしまう中、どうしてもベストマッチの紹介に時間がかかる状況です。また給与面でも韓国系、欧米系企業と比較すると日系企業の給与は徐々に魅力が薄くなってきており、今後、日本語話者の候補者数は以前よりも減少していくと予想され、日系企業も求める人物像の変化に対応をせざるをえない状況になると考えられます。

<求職者の動向>

コロナウイルスの流行も落ち着き、一社で3~5年程勤務された方は新たなチャレンジを求めて転職相談をいただくケースが増えてきていると感じます。そのほとんどが20代の方で現職にも満足しているが、違う会社で経験を積みたいという意向で、現職以上の職位や給与、福利厚生のオファーをいただけた場合は転職を決意するパターンが目立ちます。営業職を希望する求職者は多いですが、接待や長時間の運転などを懸念される方が増えてきたように感じます。

JAC Recruitment Korea 社長 鈴木 沙也佳

 JAC Recruitment Korea 社長
鈴木 沙也佳

■JAC Recruitment 韓国 概要
https://www.jacgroup.com/ja/jac-locations/jac-korea

■JAC Recruitment 韓国 転職サイト
https://www.jac-recruitment.kr/ja

 

 

インド:経済成長を見込み採用活動が活発化

求人数前年同期比:164%
求人数前期比(過去3年):

2020年2021年2022年2023年

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

109%110%65%214%114%71%121%111%107%139%109%101%

<国内情勢>

アジア開発銀行の発表によると今後のインドについて、堅調な国内消費と政府による大型設備投資によって引き続き経済成長が見込まれると予想されています。輸出の鈍化や、不規則な降水のため50%を占める農業生産に影響を与える可能性があるという懸念があるものの、GDP成長率は6%と見通しています。
また、住宅需要についても活況を呈しており、投資についても安定的な伸びを維持すると予想されています。

<企業の採用動向>

四輪市場の約50%近くのマーケット市場を占めるマルチスズキが既存工場に加え、新たに100万台規模の生産能力を有する工場の建設を発表していることもあり、引き続き自動車関連の企業の採用活動は非常に活発化しています。また、自動車部品関連の製造業に加え、設備投資も積極的に行っていることから商社などの採用も活発化しています。
コロナウイルス流行以降、経済成長が見込まれるインド市場への期待も大きいことから、特に営業拡大を目的とした採用活動が多く、インド国内で競合する企業から更なる売り上げのシェアを拡大しようと日本人を採用する企業の動きは継続しています。また、更なる売上の拡大を図るため、日本人以外にも韓国人の採用を検討し始める日系企業も散見されるようになりました。

<求職者の動向>

海外就業を希望する候補者は引き続き増加傾向にありますが、ほとんどの候補者がインド以外での就業も視野に入れ、活動しています。シニア層の候補者は経験を軸に比較的ターゲットを絞ったポジションへ応募をされますが、若手層の候補者は業界を絞らず、インドでどのような経験を構築できるかを考慮しながら積極的に求人に応募されています。優秀な人材には複数のオファーが提示されるため、業務上において他社との差別化、就業のメリットなどを選考プロセスで候補者に理解してもらう必要があります。売り手市場の採用マーケットにおいて単に候補者を判断する選考だと、オファーを提示してもなかなか承諾に至らないケースが散見されています。

JAC Recruitment India 社長 小牧 一雄

JAC Recruitment インド法人 社長
小牧 一雄

■JAC Recruitment インド 概要
https://www.jacgroup.com/ja/jac-locations/jac-india

■JAC Recruitment インド 転職サイト
https://www.jac-recruitment.in/ja

 

 

日本:足元の景況感は改善続くも海外経済に減速懸念あり

求人数前年同期比:106%
求人数前期比(過去3年):

2020年2021年2022年2023年

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

85%118%110%87%107%114%99%112%100%119%100%88%


<国内情勢>

日銀が発表した7~9月の業況判断指数(DI)は、大企業・製造業でプラス9、非製造業はプラス27と、いずれも6月から4ポイント上昇しました。
製造業では半導体不足の解消に伴う自動車を中心に業績が改善、今後も半導体製造やDX化、脱炭素関連の設備投資の伸びが予想されています。また、非製造業では旅行・レジャーなど余暇活動の再開やインバウンド旅行客の増加が寄与しています。
中小企業では受注に持ち直しが見られるものの、原料・部品コストや人件費の上昇を販売価格に転嫁しきれておらず、利益を圧迫しています。
一方、中国での不動産バブル崩壊や米中貿易摩擦に対する懸念など、海外の事業環境を不安視する経営者が増えています。

<企業の採用動向>

厚労省が発表した2023年8月の有効求人倍率(パート除く)は1.29倍。3ヶ月前(5月、1.26倍)から0.3ポイント上昇しています。一方で7~9月に当社に寄せられた新規求人申込数(日系海外事業要員募集)は前期比88%と減少しました。これは前期(4~6月)に、主に大手企業で発生した新年度開始に伴う求人の反動減です。
しかし、前年同期比では106%と増加。様々なリスクを伴う中国への依存度を抑制するためのサプライチェーン再編や、ASEANなど他地域の販路開拓を行う要員を求める求人が目立ちます。
その他、グローバルでの人的資本管理や組織のグローバル化を目的とするグローバル人事の募集や、海外拠点のガバナンス強化を目的とするERP(統合業務システム)導入など、ITシステムの開発、導入、保守経験者の募集など、バックオフィスの求人の増加も顕著に感じられます。

<求職者の動向>

7~9月の新規求職者(海外勤務経験を有する登録者)数は、前期比94%と6ポイント減少しましたが、前年同期比では108%と増えました。
コロナ禍によって常態化した在宅勤務など、新たな働き方を求める動きに加え、SDGsやパーパス経営など社会課題解決への貢献意欲や、人的資本経営への積極性など、各社の開示情報の充実が人々の転職に対する潜在的な関心を高めているほか、企業の海外投資の再開を報じるニュースが増加していることも一因であると考えられます。

JAC Recruitment 海外進出支援室 室長 チーフアナリスト 佐原 賢治

JAC Recruitment 海外進出支援室 室長 チーフアナリスト
佐原 賢治

■JAC Recruitment 概要
https://www.jacgroup.com/ja/jac-locations/jac-japan

■JAC Recruitment 転職サイト
https://corp.jac-recruitment.jp/

新着情報