2024年1月18日

アジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向 2023年10月~12月

アジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向 2023年10月~12月

世界11ヵ国で人材紹介事業を展開するJAC Recruitmentは、JACグループ各社の拠点を展開しているアジア各国での、2023年10月~12月のホワイトカラー人材紹介の市場動向をまとめました。

【ジェイ エイ シー リクルートメント アジア各社の求人数増減一覧】

 前期(7~9月)比前年同期比
シンガポール91%80%
マレーシア87%99%
タイ79%130%
インドネシア117%94%
ベトナム91%155%
韓国60%78%
インド79%122%
日本(※)95%100%

※日本企業の海外事業関連求人
注)アジア各社の求人数については、アジア各社が意図的に講じた戦略(高額帯年収の求人やスペシャリスト層求人に特化するなど)により、増減する場合もあります。そのため、アジア各社の求人数の増減は、各社の業績を直接反映するものではありません。


全体総括:JAC Recruitment 海外進出支援室 室長 チーフアナリスト 佐原 賢治

10~12月の各国の新規求人数は、インドネシアを除いて軒並み前期(7~9月)を下回る結果となりました。

2024年の経済成長率予想は、ウクライナ戦争の長期化や緊張感を増す中東情勢といった国際情勢、金利上昇などによって芳しくありません。また台湾や米国、EUなど各国で行なわれる選挙の結果いかんでは各国の政策や国際関係の変化が予想されることから、求人市場にも慎重ムードが漂っています。

一方、求人の中身に注目をすると、日本人駐在員に替わる幹部ポジションの募集や、デジタルを中心とする高度な専門性を有する人材の募集は各国で増えています。特に外資系企業の進出が著しいASEAN地域においては、その獲得競争は一層し烈で給与相場も上昇していることから、日本企業にとっては依然として難しい環境といえます。

<各国ヘッドライン>

シンガポール就労ビザ新基準COMPASSの導入による人材市場の変遷と企業の戦略的対応
マレーシア労働市場全体が回復基調へ
タイEV生産への支援措置が決定。中華系企業の進出も加速
インドネシア2024年の最低賃金上昇率は昨年に対し低下
ベトナム景況観は引き続き不透明だが、多くの企業からの注目マーケットであることを証明
韓国2024年の経済の見通しは明るい兆し。しかし日系企業は人材の確保難航が続く
インド経済成長を見込んだ積極的な採用活動が継続
日本2024年に不透明感はあるものの、大手製造業を中心に求人は堅調。海外駐在要員募集に増加の兆し


シンガポール:就労ビザ新基準COMPASSの導入による人材市場の変遷と企業の戦略的対応

求人数前年同期比:80%
求人数前期比(過去3年):

2021年2022年2023年
1~3月4~6月7~9月10~12月1~3月4~6月7~9月10~12月1~3月4~6月7~9月10~12月
131%100%112%90%151%96%156%68%157%59%95%91%

<国内情勢>

2023年10~12月期のシンガポールの経済成長率は、前年同期比で2.1%増加し、2023年通年のGDP成長率の見通しは1.2%となっています。世界的な半導体需要の低迷により経済が減速しており、精密機器や機械産業なども引き続きその影響を受けています。また、消費者物価指数(CPI)も前年同月比で3.6%上昇し、2年ぶりに4%を下回りました。これは海外旅行における消費の増加と国内消費の鈍化が一因となっています。

<企業の採用動向>

2023年9月から施行された新しい就労ビザ取得基準であるCOMPASSの導入に伴い、企業は不透明な景気回復と新しい制度への様子見から、多くの企業で新規の採用数が減少傾向となりました。増員よりも既存のスタッフの退職に伴うリプレイスメントポジションが主なニーズでした。特に、PMET(Professionals, Managers, Executives, and Technicians)の月給が3,000シンガポールドル以上の従業員を雇用する企業は、COMPASSの影響を受けており、駐在員の交代や専門職の採用に困難が生じています。

その結果、人材戦略や雇用に関する相談が増加しています。一部の企業は、シンガポール人や永住権保持者の優先採用を検討しており、PMETの数が24名に近い企業は派遣サービスの利用など、全体の人数を制御する仕組みを模索しています。これらの変化は、新しい就労ビザ制度が企業の雇用戦略に影響を与えていることを示しています。

<求職者の動向>

例年通り、10~12月期には求職者の登録が減少傾向にあり、年末に向けてのボーナスや昇給を待つ人が増加していました。この傾向とは別に、業界ごとに見ても人材の流動性は低く、企業からの人材ニーズは存在するものの、求められるスキルセットに適合する候補者は少なく、売り手市場となっています。さらに、2023年9月から導入されたCOMPASSの影響で、引き続きシンガポール人や永住権保持者など、ビザ取得の必要のない求職者を求める企業も多く見受けられました。

JAC Recruitment シンガポール法人 社長  ファハド・ファルック

JAC Recruitment シンガポール法人 社長
ファハド・ファルック

■JAC Recruitment シンガポール 概要
https://www.jacgroup.com/jp/locations/country/singapore

■JAC Recruitment シンガポール 転職サイト
https://www.jac-recruitment.sg/ja


マレーシア:労働市場全体が回復基調へ

求人数前年同期比:99 %
求人数前期比(過去3年):

2021年2022年2023年
1~3月4~6月7~9月10~12月1~3月4~6月7~9月10~12月1~3月4~6月7~9月10~12月
150%116%95%104%105%105%131%61%132%78%111%87%

<国内情勢>

2023年10~12月期のマレーシアの経済状況は、年間を通じて着実に成長し、更に勢いを増しています。マレーシア統計局の報告によると、2023年後半も経済成長は維持され、経済成長率3.9%の増加に寄与。10~12月期の製造業は、石油・化学・ゴム・プラスチック製品のサブセクターの落ち込みに影響され、販売額が1.4%減少しました。マレーシアの経済見通しは、2023年の推定成長率4%に対し、2024年には4.5~5%のGDP成長率を示すと予想され、好転の兆しを見せています。この楽観的な見通しは、外需の顕著な急増によるところが大きく、マレーシア経済の勢いが向上していることを物語っています。

<企業の採用動向>

採用環境は顕著な変貌を遂げつつあります。様々な分野でオンライン求人広告が大幅に急増し、特に、情報技術、医療、エンジニアリング、金融、電子商取引が活発で、熟練したプロフェッショナルに常にチャンスがある状況です。更に、再生可能エネルギー、デジタルマーケティング、データ分析などの新興部門が牽引役となり、雇用全体を活性化しています。一方で、特定の分野、特にデジタル技術においては依然としてスキル格差があり、この問題に対処するための政府の努力が続けられているにもかかわらず、必要な専門スキルを持つ候補者を見つけることは依然として困難です。

2024年を展望すると、マレーシアの労働市場全体は回復基調にあり、2024年までにパンデミック以前の水準に回復すると期待されています。外国からの直接投資、政治的安定、良好な経済状況が、この楽観的な見通しの重要な要因であると指摘されています。

<求職者の動向>

採用の競争が激しく、各企業は特定の分野で必要なスキルと経験を持つ候補者を惹きつけるため、積極的に競争力のある給与を提示しています。求職者が最良の機会を得るためには、求職活動に一層の努力を払い、自分の専門性をアピールし、履歴書や面接で効果的に自己PRを行う必要があります。このような積極的なアプローチは、一流のポジションに抜擢される可能性を高めるために不可欠です。

JAC Recruitmentマレーシア法人 社長 ニック・テイラー

JAC Recruitment マレーシア法人 社長
ニック・テイラー

■JAC Recruitment マレーシア 概要
https://www.jacgroup.com/jp/locations/country/malaysia

■JAC Recruitment マレーシア 転職サイト
https://www.jac-recruitment.my/ja


タイ:EV生産への支援措置が決定。中華系企業の進出も加速

求人数前年同期比:130%
求人数前期比(過去3年):

2021年2022年2023年
1~3月4~6月7~9月10~12月1~3月4~6月7~9月10~12月1~3月4~6月7~9月10~12月
143%90%93%90%154%80%143%57%205%82%97%79%

<国内情勢>

タイ首相が委員長を務める国家電気自動車政策員会は、電気自動車(EV)の生産や投資を促進するため、EV3.5なる支援策を承認しました。補助金の支給、輸入関税の引下げ等が盛り込まれています。

2023年1~11月のバッテリー式乗用車登録台数は、4位までを中国メーカーが占めていますが、日本車メーカー4社がEV現地生産に向け、今後5年間で約6,150億円を投資する見通しを明らかにしています。

<企業の採用動向>

日系企業においては、採用を年明けに検討する企業が多く、選考活動の動きは鈍りました。中華系企業の進出に伴い、中国語スピーカーを求める求人が増加しているものの、母数が少ないことから採用活動が難航している企業も多い印象です。

東南アジア内ではベトナムへの新規進出企業が増加していますが、タイでも引き続き進出を予定する企業が多く、新規設立に伴う現地スタッフの採用ニーズもある状況です。マネージャーなどの管理職や、経理、ITといった専門職の募集ニーズがあるものの、人材不足により採用が長期化するケースも増えています。

<求職者の動向>

円安も追い風となり、子供の教育の為に海外移住を希望する求職者が増えてきました。ただし、タイのみを希望する求職者は少なく、あくまで複数国のうちの一つとして捉えているため、待遇面や業務内容などタイ以外の国もベンチマークとする必要があります。どれだけ求職者にとって魅力的なオファー内容を提示できるかが、引き続き採用のポイントといえるでしょう。

JAC Recruitment タイ法人 社長  ガヴィン・ヘンショー

JAC Recruitment タイ法人 社長
ガヴィン・ヘンショー

■JAC Recruitment タイ 概要
https://www.jacgroup.com/jp/locations/country/thailand

■JAC Recruitment タイ 転職サイト
https://www.jac-recruitment.co.th/ja


インドネシア:2024年の最低賃金上昇率は昨年に対し低下

求人数前年同期比:94%
求人数前期比(過去3年):

2021年2022年2023年
1~3月4~6月7~9月10~12月1~3月4~6月7~9月10~12月1~3月4~6月7~9月10~12月
186%97%83%107%138%101%61%129%85%148%64%117%

<国内情勢>

11月21日にインドネシア各州、11月30日に各県・市の2024年最低賃金の発表がありました。

ジャカルタ特別州は2024年と比較し3.38%上昇(5,067,318インドネシアルピア)、日系企業が多く進出している西ジャワ州のブカシ市、カラワン県はそれぞれ3.59% 上昇(5,343,430インドネシアルピア)、1.58%上昇(5,257,834インドネシアルピア)となり7%代後半の上昇率であった昨年と比べ低く発表されました。

しかしながら10年前と比較して、ジャカルタで2.07倍、ブカシ市で2.19倍、カラワン県で2.15倍と最低賃金は大きく上昇しており、製造業を中心とし進出している日系企業の多くは人件費の負担割合が大きくなっています。

<企業の採用動向>

2010年台からインドネシアに進出している多くの日系製造業は、設立から10年以上が経っており、設立時に入社した社員の多くが現在幹部となっています。このようなインドネシア人社員は数年以内に定年退職を迎える年齢のため、多くの企業では現在、世代交代の採用活動を活発に行っています。特に30代後半から40代の経験を積んだ候補者を希望される企業が多くなっています。

日本人採用に関しては、これまで日本から駐在員を派遣していた企業が交代要員の確保が難しくなってきていることから、今までは駐在員のサポートポジションが多かった現地採用に関して、マネージャーや現地法人社長等のハイポジションに関しても現地採用で募集する企業が増えています。

<求職者の動向>

前期と大きく変わらない水準で転職希望の登録があります。多い年齢層としては20代~30代前半と50代後半~60代となっており、ASEAN諸国の中で比較的VISAの取得要件が容易なため、他国での転職を検討していた求職者が検討範囲を広げて、インドネシアを含めて転職活動をすることも増えています。コロナ以降日本在住の求職者も増加しており、初めて海外転職に挑戦される方や、過去ASEAN地域での勤務経験のある方が多くいます。

JAC Recruitment インドネシア法人 アソシエイトダイレクター 山下 冬馬

JAC Recruitment インドネシア法人 アソシエイトダイレクター
山下 冬馬

■JAC Recruitment インドネシア 概要
https://www.jacgroup.com/jp/locations/country/indonesia

■JAC Recruitment インドネシア 転職サイト
https://www.jac-recruitment.co.id/ja


ベトナム:景況観は引き続き不透明だが、多くの企業からの注目マーケットであることを証明

求人数前年同期比:155%
求人数前期比(過去3年):

2021年2022年2023年
1~3月4~6月7~9月10~12月1~3月4~6月7~9月10~12月1~3月4~6月7~9月10~12月
88%180%76%60%248%111%84%67%137%119%105%91%

<国内情勢>

JETROによる海外進出日系企業実態調査によると、世界的に2023年に黒字を見込む企業数は低下し、ベトナムでは業績悪化が業績改善を見込む企業を上回る結果となりました。特に運輸・倉庫、電気・電子機器、商社といった業界での景況感の悪さが目立ちます。理由としては、現地および輸出先市場での需要の減少、人件費の上昇によるものです。一方で、自社グループ内のベトナム拠点における売り上げ高の割合が今後拡大すると見込む企業が約6割に達するなど、引き続きポテンシャルのあるマーケットであると認識されている結果となりました。

ベトナム内のGDP成長率で見ると旅行客の回復から、サービス業、芸術・娯楽、宿泊・飲食サービスの分野で高い成長率を記録しています。

<企業の採用動向>

例年10~12月期はローカル人材の流動性が落ちる時期となり、今年も同様の傾向が見られます。例年旧正月が開ける時期から人材の流動性が高まるため、そのタイミングに備え採用を検討している企業は採用の競合となる企業に先んじて活動を開始することが採用成功のポイントとなります。2024年は、アメリカが数十億ドル規模の投資を検討している半導体産業が一つのキーワードとなると思われます。

日本人の採用市場については、現地支社の運営ローカル化を目指した企業からの相談が増加しており、今後駐在員から現地採用への切替えニーズが増えてくるものと予想されています。ただし、労働許可証取得プロセスに引き続き不明瞭な点が多く、今後の動向を注視する必要があります。

<求職者の動向>

ローカル人材の転職活動については、例年通り活動状況は鈍化傾向。旧正月明けから上半期にかけて活動が活発になると想定されます。

日本からベトナムへの海外転職希望者数については、依然としてやや低調。他国に比べ定年による転職機会の制限が少ないため、シニア層の海外転職希望は変わらず強く、アクティブに活動している方が多い印象。一方ジュニア・ミドルクラスにおいては、足元の日本の経済状況などから海外就業を希望する潜在層は増えていますが、待遇面などの理由から慎重になる方が散見されます。

JAC Recruitment ベトナム法人 Regional Director トゥ・ハー・グエン

JAC Recruitment ベトナム法人 Regional Director
トゥ・ハー・グエン

■JAC Recruitment ベトナム 概要
https://www.jacgroup.com/jp/locations/country/vietnam

■JAC Recruitment ベトナム 転職サイト
https://www.jac-recruitment.vn/ja


韓国:2024年の経済の見通しは明るい兆し。しかし、日系企業は人材の確保難航が続く

求人数前年同期比:78%
求人数前期比(過去3年):

2021年2022年2023年
1~3月4~6月7~9月10~12月1~3月4~6月7~9月10~12月1~3月4~6月7~9月10~12月
102%167%88%117%90%96%84%125%104%73%169%60%

<国内情勢>

2024年度は経済が今年よりも良くなるという声を様々な方面より耳にします。韓国は半導体ビジネスの経済影響が非常に大きな国のため半導体業界の動向が気になりますが、10~12月期は輸出額が伸び来年度も引き続き伸びる事が予想されております。

また、Hyundai Motor(現代自動車)の国内外からの人気も高まっている事もあり、新規工場設立や今年の12月の人事査定では過去最大の252人が昇進といった明るいニュースも増えています。

<企業の採用動向>

10~12月の企業求人状況は前期比と比較し、求人数は落ち着きました。今期は時間をかけてじっくり採用したいポジションのご依頼が増えた印象で、母数の少ないニッチ領域の技術者や営業人材でも7~9月期は新卒人材などポテンシャルの方を求める声が多かったのですが、10~12月期は30~35歳程の即戦力人材の依頼が増えました。

また、これまでは圧倒的に日系企業からの依頼求人は日本語スピーカーを求める声が多かった状況ですが、近年は近隣諸国、欧州圏への事業展開を韓国から見られるケースも増えてきており英語スピーカーのご依頼も増えております。半導体関連業界、二次電池関連業界の来年度の展望は2023年よりも良いと予想されており引き続き営業人材の拡大計画のお話をいただいております。

<求職者の動向>

ボーナス査定前(12月~2月の旧正月)までは求職者の動きが鈍くなる傾向です。現職がある方は特にその動きが顕著で、特段現職よりも魅力的(給与、福利厚生、仕事内容、職位)でなければオファーを見送るケースも多いです。日本語が話せる韓国籍の候補者100名へ日系企業の魅力に関してアンケートを取り、多くの候補者が日系企業で働く事に満足をされているものの、「上位ポジションは日本人駐在員の為、高いポジションへのキャリアアップが見込めない」「保守的な文化」などの声も多く、特に若手優秀人材の確保には変革が求められています。

JAC Recruitment 韓国法人 社長 鈴木 沙也佳

JAC Recruitment 韓国法人 社長
鈴木 沙也佳

■JAC Recruitment 韓国 概要
https://www.jacgroup.com/jp/locations/country/korea

■JAC Recruitment 韓国 転職サイト
https://www.jac-recruitment.kr/ja


インド:経済成長を見込んだ積極的な採用活動が継続

求人数前年同期比:122%
求人数前期比(過去3年):

2021年2022年2023年
1~3月4~6月7~9月10~12月1~3月4~6月7~9月10~12月1~3月4~6月7~9月10~12月
110%65%214%114%71%121%111%107%139%109%101%79%

<国内情勢>

堅調な国内消費と政府による大型設備投資によって、引き続き経済成長が見込まれると予想しています。特に半導体や電気自動車、再生可能エネルギーなど、先端産業分野において様々な産業政策を打ち出しています。また、四輪自動車の約50%近くのマーケットシェアを持つマルチスズキも年間100万台を生産可能な工場を新設するなど、引き続き大型投資が見込まれています。

<企業の採用動向>

特に四輪自動車関連企業の成長が見込まれることから、製造業のみならず、商社などの企業も採用活動も活発化しています。ただ、例年通り10~12月期は年末に向けて企業の採用活動が少しずつ落ち着きますが、1月以降にまた採用活動が活発化することが見込まれます。

引き続き経済成長が見込まれるインド市場への期待も大きいことから、営業拡大を目的とした営業職の採用活動が多く見られ、インド国内で競合する企業から更なる売り上げのシェアを拡大しようと日本人の採用やローカル企業への営業拡大を目的としたインド人日本語話者を採用する企業の動きが多くみられました。一方で、多くの駐在員が在籍する企業も多く、人件費を抑えるため現地採用へと切り替える採用ニーズが増えてくるものと予想されます。

<求職者の動向>

海外就業を希望する候補者の増加傾向は続いていますが、例年通り年末に向けて候補者の動きが鈍化しました。1月以降に企業の採用活動が活発化するにともない、求職者も活発化することが見込まれます。

インド就業を検討している求職者の特徴として、多くがインド以外での就業も視野に入れ、就業活動をしています。インドでの就業経験のあるシニア層の候補者は経験を軸に比較的ターゲットを絞ったポジションへ応募をされますが、若手層の候補者は業界を絞らず、インドでどのような経験を構築できるかを考慮しながら積極的に多くの求人に応募される傾向があります。優秀な人材には複数のオファーが提示されることもあり、引き続き売り手市場の転職マーケットが予想されます。

JAC Recruitment インド法人 社長 小牧 一雄

JAC Recruitment インド法人 社長
小牧 一雄

■JAC Recruitment インド 概要
https://www.jacgroup.com/jp/locations/country/india

■JAC Recruitment インド 転職サイト
https://www.jac-recruitment.in/ja


日本:2024年に不透明感はあるも大手製造業を中心に求人は堅調。海外駐在要員募集に増加の兆し

求人数前年同期比:100%
求人数前期比(過去3年):

2021年2022年2023年
1~3月4~6月7~9月10~12月1~3月4~6月7~9月10~12月1~3月4~6月7~9月10~12月
118%110%87%107%114%99%112%100%119%100%88%95%

<国内情勢>

足元の景況感は、製造業では増産が進む自動車関連を中心に上向き、また非製造業においても人流の正常化やインバウンド旅行客の増加によって好調が伝えられています。しかし中小企業では、原油高や円安に伴う資材価格の高騰や人手不足対策としての賃上げなど利益圧迫要因が重なり、大企業ほどの明るさは感じられません。

2024年3月の決算では利益予想を上方修正する企業が続出していますが、2024年に予定されている米国、台湾など各国の選挙の結果いかんでは様々なリスクが想定され、企業の姿勢はより慎重になるものと予想されます。

<企業の採用動向>

2023年11月の有効求人倍率(パート除く)は1.33倍。3ヶ月前(8月、1.29倍)から0.04ポイント上昇しています。10~12月に当社に寄せられた新規求人申込数(日系海外事業要員募集)は、前期比95%と微減。完成車メーカーやその1次サプライヤーである大企業で新エネルギー車関連の求人が数多く寄せられた一方、中小企業からの求人数には依然として伸びが見られません。

求人の中身で目立つのは海外駐在要員の募集が前年比139%に増えていること。自動車・機械部品メーカーで中国やタイなどアジアの既存生産拠点の交替要員を求めるものが多いほか、営業系では北米での売上増進を目的とする募集も目立ちます。また、業種別では、準大手級の医薬品メーカーが国際開発や海外マーケティングの要員募集を行っているほか、電機メーカーが欧州で急速に拡がる脱炭素関連市場を取り込むための技術者や営業職の募集に積極的です。

その他、グローバルでの人的資本管理や組織のグローバル化を目的とするグローバル人事の募集や、海外拠点のガバナンス強化を目的とするERP(統合業務システム)導入など、ITシステムの開発、導入、保守経験者の募集など、バックオフィスの求人も依然として活発に行われています。

<求職者の動向>

10~12月の新規求職者(海外勤務経験を有する登録者)数は、前期比110%と大幅に増加。前年同期比でも112%と増えました。人材の流動化を奨励するような報道も多く、また実際に転職をした人の中で転職によって年収が増加した人の割合が増えていること、さらには外部人材を獲得するために報酬制度や福利厚生の見直しを行う企業が積極的にそれを喧伝していることから、人々の転職に対する関心や意欲は高まっています。

JAC Recruitment 海外進出支援室 室長 チーフアナリスト 佐原 賢治

JAC Recruitment 海外進出支援室 室長 チーフアナリスト
佐原 賢治

■JAC Recruitment 概要
https://www.jacgroup.com/jp/locations/country/japan

■JAC Recruitment 転職サイト
https://www.jac-recruitment.jp

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