2021 年 3 月 4 日

アジア 9 ヵ国の中途採用時給与水準調査結果を公開

アジアの大半の国々で、中途採用時給与の上昇率が減速

アジア 9 ヵ国の中途採用時給与水準調査結果を公開

- 2013 年の調査開始以来上昇を続けていたアジアの採用時給与の上昇率が、新型コロナウイルスの影響を受け全体的に低下 -

・2020 年の中途採用時給与上昇率が前年比で低下した国と低下率(ポイント)は以下の通りインドネシア:8、マレーシア:4、タイ:4、中国:4、韓国:2、ベトナム:1、インド:1
・シンガポールと香港は 2019 年度の上昇率を維持
・日本の上昇率はアジア各国と異なり、慢性的に横這いの状態が続く

世界 11 ヵ国で人材紹介事業を展開する業界大手の株式会社 ジェイ エイ シー リクルートメント(代表取締役社長:松園 健、本社:東京都千代田区)は、この度、アジア 9 ヵ国(シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナム、インドネシア、中国・香港、韓国、インド、日本)の 2021 年度の中途採用時給与水準調査を公開しました。当社が同調査を開始した 2013 年以降、2019 年まで 毎年アジアの多数の国々で上昇を続けていた中途採用時の給与の対前年上昇率(※)が、2020 年度は新型コロナウイルスの影響を受け初めて全体的に低下したことが明らかになりました。
※ 中途採用時の給与相場から独自に集計。日本を除くアジア各国では、中途採用時の給与額は毎年上昇を続けていることが通例となっています。

アジア各国・地域のホワイトカラー中途採用時給与 上昇率推移

※当グラフの元データは別紙(3 枚目)をご参照ください。

日本を除き、長年上昇を続けていたアジア各国のホワイトカラー中途採用時給与の上昇率が全体的に低下したのは、2008年~2009 年のリーマンショック以降初めての現象です。

【東南アジアの中進国を中心に上昇率が低下】

上昇率の低下が著しかったのはインドネシア、タイ、マレーシアなど東南アジアの中進国です。各国の低下の要因は以下の通りです。

マレーシア :近年、欧米系の BPO(Business Process Outsourcing、業務委託)・シェアードサービスセンターの全体的な給与相場は年 10~20%上昇と好調が続いていたが、2020 年は欧米に顧客を有する BPO 企業のみならず欧米本国の本社の業績悪化によりシェアードサービスセンターの採用時の給与額が低下。

タイ :主力産業の自動車を中心としたメーカーや商社の国境封鎖にともなう輸出不振、外出禁止等による小売・消費財・外食の業績悪化、GDP の 15%程度を占める観光業の業績悪化が大きく影響し採用時給与の上昇率が低下。

インドネシア :国内外の需要減退に加え、工場閉鎖をはじめオペレーション全般に制約が生じた製造業、内需の停滞による消費財全般、海外観光客の停止による旅行・ホテル・レストラン業界全般で新型コロナウイルスの影響を大きく受けたことが要因。

なお、新型コロナウイルスの発生当初から影響を受けた中国本土も、2020 年は中途採用時の給与の上昇率が前年比で 4 ポイント減と大きく減速しました。他方、対策も早かったことから、21 年は急速な回復が見込まれています。

【アジアで著しく影響を受けたのは観光業関連】

新型コロナウイルスの影響を大きく受けたのは観光業(主に旅行・ホテル業界)で、同業界では大規模な人員削減等を 余儀なくされ採用もほぼ完全に凍結しました。特に、これまで日系企業が日本人を対象とした観光関連ビジネスをアジアで成長 させ雇用も促進させてきたものの、新型コロナウイルスにより打撃を受け、全体的に業績が大幅に悪化しました。

【オンライン・ヘルスケア・IT等の業界の業績は好調を維持】

一方で、e コマースを中心とする小売販売やヘルスケア関連、また自宅滞在の長期化に伴いスーパーマーケットなどの食料品・日用品関連業界も業績を伸ばし、同時に採用人数や採用時の給与も増加・上昇しました。外食産業は持ち帰りへ業態転換を進めています。オンライン化に関しては、欧米系のプラットフォーマーのほかに、現地系や中国系の企業の成長と採用意欲が 活発です。

なお、新型コロナウイルス以外の給与相場上昇の減速の要因は、中国では 2018 年末からの米中貿易摩擦による経済の停滞、韓国では最低賃金の急速な引上げに伴う 2019 年からの経済不振とその反動による 2020 年からの最低賃金上昇幅の 抑制などが挙げられます。また、シンガポールにおいてコロナ禍でも人材需給が引き締まった背景には、2011 年の総選挙以来続く自国民雇用保護の動きが影響しています。

【日本はおよそ 30 年給与水準が変化せず】

国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、1991 年の平均給与(1 年勤続者の平均)は 446 万6000 円、2019 年は 436 万 4000 円と、30 年近くほぼ変化していません。これは 1980 年には 294.8 万円で、それ以降 11 年間で 4 割以上伸長した経緯とは対照的な結果です。日系企業 が海外で現地の優秀な人材を採用し、生産以外の開発や販売 などの事業を拡大させるために必要とされる経営の「 現地化」や「自立化」を促進させグローバル競争を勝ち抜くには、現地企業や現地に進出する外資系企業が提示する給与と同等、もしくはそれ以上の給与を提示することが必要条件です。

アジアでは給与相場が年々高まるだけでなく職種や時期によって給与相場も大きく変動するため、変化のない日本の給与相場に準じた採用を続けていては優秀な人材 の獲得競争や厳しい国際競争に遅れを取ることになります。海外で事業を展開する際は、各国のビジネス慣習、給与相場や労働市場を常に把握し、適切な経営判断を行うことが重要です。

ホワイトカラー中途採用時求人給与の対前年度上昇率推移

【日本はおよそ 30 年給与水準が変化せず】

国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、1991 年の平均給与(1 年勤続者の平均)は 446 万6000 円、2019 年は 436 万 4000 円と、30 年近くほぼ変化していません。これは 1980 年には 294.8 万円で、それ以降 11 年間で 4 割以上伸長した経緯とは対照的な結果です。日系企業 が海外で現地の優秀な人材を採用し、生産以外の開発や販売 などの事業を拡大させるために必要とされる経営の「 現地化」や「自立化」を促進させグローバル競争を勝ち抜くには、現地企業や現地に進出する外資系企業が提示する給与と同等、もしくはそれ以上の給与を提示することが必要条件です。

アジアでは給与相場が年々高まるだけでなく職種や時期によって給与相場も大きく変動するため、変化のない日本の給与相場に準じた採用を続けていては優秀な人材 の獲得競争や厳しい国際競争に遅れを取ることになります。海外で事業を展開する際は、各国のビジネス慣習、給与相場や労働市場を常に把握し、適切な経営判断を行うことが重要です。

【参考】 アジア各国のホワイトカラー中途採用時給与 上昇率推移 元データ 

 シンガポールマレーシアインドネシアタイベトナムインド中国香港韓国日本
20135%7%10%5%8%10%115%5%1%
20144%6%10%4%9%10%10%5%5%1%
20154%6%10%5%8%10%10%4%5%1%
20163%6%11%5%8%10%10%3%5%1%
20174%5%10%4%10%10%10%3%4%2%
20184%5%9%4%10%10%10%3%4%2%
20194%5%8%4%8%10%9%4%3%1%
20204%1%0%0%7%9%5%4%1%1%

 

2021 年度 アジアの中途採用時給与水準調査(The Salary Analysis in Asia 2021)は、こちらをご参照ください
日本語版:https://corp.jac-recruitment.jp/pdf/jac_salaryanalysis2021_ja.pdf
英語版: https://corp.jac-recruitment.jp/pdf/jac_salaryanalysis2021_en.pdf