シンガポール:就労ビザ新基準COMPASSの導入による人材市場の変遷と企業の戦略的対応

求人数前年同期比:80%
求人数前期比(過去3年):

2021年

2022年

2023年

1~3月

4~6月

7~9月

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

10~12月

1~3月

4~6月

7~9月

10~12月

131%

100%

112%

90%

151%

96%

156%

68%

157%

59%

95%

91%

<シンガポールの国内情勢>

2023年10~12月期のシンガポールの経済成長率は、前年同期比で2.1%増加し、2023年通年のGDP成長率の見通しは1.2%となっています。世界的な半導体需要の低迷により経済が減速しており、精密機器や機械産業なども引き続きその影響を受けています。また、消費者物価指数(CPI)も前年同月比で3.6%上昇し、2年ぶりに4%を下回りました。これは海外旅行における消費の増加と国内消費の鈍化が一因となっています。

<企業のシンガポールにおける現地採用動向>

2023年9月から施行された新しい就労ビザ取得基準であるCOMPASSの導入に伴い、企業は不透明な景気回復と新しい制度への様子見から、多くの企業で新規の採用数が減少傾向となりました。増員よりも既存のスタッフの退職に伴うリプレイスメントポジションが主なニーズでした。特に、PMET(Professionals, Managers, Executives, and Technicians)の月給が3,000シンガポールドル以上の従業員を雇用する企業は、COMPASSの影響を受けており、駐在員の交代や専門職の採用に困難が生じています。

その結果、人材戦略や雇用に関する相談が増加しています。一部の企業は、シンガポール人や永住権保持者の優先採用を検討しており、PMETの数が24名に近い企業は派遣サービスの利用など、全体の人数を制御する仕組みを模索しています。これらの変化は、新しい就労ビザ制度が企業の雇用戦略に影響を与えていることを示しています。

<シンガポールの求職者動向>

例年通り、10~12月期には求職者の登録が減少傾向にあり、年末に向けてのボーナスや昇給を待つ人が増加していました。この傾向とは別に、業界ごとに見ても人材の流動性は低く、企業からの人材ニーズは存在するものの、求められるスキルセットに適合する候補者は少なく、売り手市場となっています。さらに、2023年9月から導入されたCOMPASSの影響で、引き続きシンガポール人や永住権保持者など、ビザ取得の必要のない求職者を求める企業も多く見受けられました。

	JAC Recruitment シンガポール法人 社長 ファハド・ファルック

JAC Recruitment シンガポール法人 社長
ファハド・ファルック

■JAC Recruitment シンガポール 概要
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■JAC Recruitment シンガポール 転職サイト
https://www.jac-recruitment.sg/ja

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前期(7~9月)比

前年同期比

シンガポール

91%

80%

マレーシア

87%

99%

タイ

79%

130%

インドネシア

117%

94%

ベトナム

91%

155%

韓国

60%

78%

インド

79%

122%

日本(※)

95%

100%

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